穴だらけの森 6<終>

そのとき! りすがにんげんに飛びついて、噛みつきました! さらに! さるが鉄砲を奪って逃げました! 「こらっ!返せっ」 逃げます! 逃げます! そして、 鉄砲を、 穴の中へ─── ぽいっ!!! 「大事な鉄砲だ!!」 ところが・・・ 「しまったっ・・・化か…

穴だらけの森 5

「わーい、金貨だ小判だ」 チャリンチャリ~ン おさるさん大騒ぎ! それを聞きつけて、にんげんは中へ入って来ました。 さるは奥へ逃げ込みます! 「おお、これは金じゃないか」 にんげんが金貨を拾っている隙に、さるは裏の道をぐるっと回り込んで、みんな…

穴だらけの森 4

にんげんの猟師は、洞穴のなかで見かけた動物たちのことを思い出し、 待ち伏せすることにしました。 りすはそれを見ていて、たぬきに知らせました。 りすとたぬきは相談しました。たぬきは少し考えて言いました。 「葉っぱがあれば、金貨に変えてあのにんげ…

穴だらけの森 3

りすとたぬきは、にんげんに出会いました。 二匹は大慌てで駆け抜けて逃げました。 さらに続けて、くまと出会いました。 小さなりすが一番最初に気づいて、二匹はくまが気付く前に急いで隠れました。 すると二匹の目の前で、くまとにんげんが出会いました。 …

穴だらけの森 2

さて、穴に落ちたみんな、出口を求めてうろうろ歩き回りました。 そうして・・・ りすとたぬきが出会いました。 二匹はいっしょに出口を探すことにしました。 きつねとさるが出会いました。 二匹は別々に出口を探すことにしました。 きつねとくまが出会いま…

穴だらけの森 1

あるところに、 穴だらけの森がありました。 あるとき、 りすが落ちました。 たぬきが落ちました。 きつねが落ちました。 さるが落ちました。 くまも落ちました。 落ちないように頑張りましたが、 やっぱり落ちました。 それから、 にんげんの猟師が落ちまし…

1-001-015.はじまりの歌

生きることに価値があるのなら生かすことはもっと価値がある あなたの生を願うから 石よりも硬い決意で使命を果たそう 心安らかな日々が訪れるように 私たちの悪夢が始まらないように 眠り子を起こしてはならない夢を見ているのだから穏やかな久遠の夢を も…

1-001-014.朧月夜の、初陣 12

ゴゥッ…! その時、火球が二人の間を引き裂くように飛び去って行った。 振り向くと、さっきの敵が再び迫っていた。マドカは、殺意をぶつけられたように感じて、さっと血の気が引いた。 (油断、してた───もし今のが当たっていたら…) やっぱり、訓練とは違う…

1-001-013.朧月夜の、初陣 11

マドカは、その様子を見ていた。 クルス達が吹き飛ばした荷車と、積荷である砲弾の爆発。 砲弾のいくつかは、爆発せずにバウンドし、”巨人”の足元まで転がっていった。 (あ…!、あれを、爆発させれば…!) クルス隊長に伝えようと思ったが、離れ過ぎている…

1-001-012.朧月夜の、初陣 10

セオドナ基地が陥落した… 敵の地上部隊からの攻撃を受けたのか。あるいは、ドラゴンかもしれない。あるいは、先の砲撃で大損害を受けたのか。 味方の第一部隊は、どうしたのだろう。騎兵は、歩兵は。 (いやいや待てよ…) 原因はともかく、ちょっと早過ぎな…

1-001-011.朧月夜の、初陣 9

───ドラゴンは、乗り手を選ぶことがある。 そのようなドラゴンは、 選んだ乗り手の意図を察知することに長けている、と言われる。そして、乗り手の側も、ドラゴンの感じていることが分かるという。 両者の間には、なにか不思議なつながりがあるらしい。 マド…

1-001-010.朧月夜の、初陣 8

朧月が、ぼんやりとした光を放ちながら浮かんでいる。大きく広がる薄い雲を背景に、 切れ切れの雲が、空を横切っていく。 ”巨人”は未だシルエットしか見えず、近づくにつれ、その巨大さだけが明らかになってくる。 高さは、木組みの見張り台と同じか、もっと…

1-001-009.朧月夜の、初陣 7

人影…と見えたが、人型ではない。ただ、何か巨大な、動くもの…である。よく見ると、ぼんやり光っているように見える。 驚くのはその大きさで、 遠くにポツンと見えるだけだが、それでも周囲の木々の、何倍もの高さがある…! (なんだありゃ…) (あんなもの…

1-001-008.朧月夜の、初陣 6

暗闇に、少し目が慣れてきた。 下から見上げると、ちょうど真上に大きな雲が頭上を覆うように広がって来ていて、 格闘するドラゴン達のシルエットが(割と)よく見える。 小柄な方が、マドカのジェットドラゴンだ。 逆に上からだと、暗い森が背景になって、…

1-001-007.朧月夜の、初陣 5

マドカは、少し先をゆくクルス達が突然消えたのでびっくりして、しばらくその場にとどまっていた。 ドラゴン達が吠えあっている声が響いてくる。 (戦ってるの…?!) だったら、援護に─── ゴオッ…!! 突然、斜め下方から飛んできた火球が近くをかすめ、そ…

1-001-006.朧月夜の、初陣 4

クルスは、炎が飛び交っている空域に近付くにつれ、戸惑ってしまった。 敵味方の区別がつかない。 月明かりと鳴き声で、微かに居場所は知れるものの、ドラゴンや、その乗り手が身につけているはずの紋章やチーフなどは、 全く見えない。 それどころか、ちょ…

1-001-005.朧月夜の、初陣 3

オルクに乗って上空へ舞い上がると、気分も一気に高揚した。 かがり火のある地上と違って、夜の空の闇はまとわりつくように深く、 月明かりが、自分の手元をぼんやりと照らすばかり。 夜中にこうして飛ぶのは久し振りだったが、 恐ろしさよりも神秘さを、マ…

1-001-004.朧月夜の、初陣 2

ドッ…!!ゴオォォン!!!!!! 静まり返ったセオドナ基地に響き渡る、 突然の炸裂音!! その爆音と振動は基地の隅々にまで伝わって、 見張りの兵や、夜更かししていた者たちを飛び上がらせた。 腰を抜かした者以外は爆音の方向に炎が上がっているのを見…

1-001-003.朧月夜の、初陣 1

東雲の前、夜がもっとも深く沈むころ。おぼろ月が、ぼんやりと───地上の暗い森を照らしている。 見渡す限りの、広大な森。 ときおり吹く風が、森の木々を、草葉を、ざわざわと揺らしている。 不気味に響く声は、夜鳴き鳥。 草ずれの音は、徘徊する獣。 そん…

『花』

飛ぶことと 咲くことは 同じ あなたは花 飛べないけれど 素敵な花 夢を見よう 大きな夢を 私たちには 夢を叶える力が 備わっている

『光』

いきなさい 世界は ひろいから たたかいなさい あなたを 弱気にさせるものと

『こんな夜は…』

こんな夜は あの人も 見上げているはず 同じ空を 同じ月を きっとあの人も メッセージを探してる 月の模様に 星の配置に 世界ごと眠っているような こんな夜には。 …そうだといいなと、 思う。

1-001.002.~生命の歌

ご覧なさい 必死で生きようとしているあの子を そこには人生の葛藤も、憂鬱もない ただ願いただ進む 純粋に 懸命に ああして、生命は自ら輝くの その煌めきが 世界を癒し そして、 育むのでしょう 生きること それは、生命あるものの使命

1-001-001.夜明けの逃飛行

前後斜めの左右から、二体のドラゴンが挟み撃ちを仕掛けてきた。 マドカは、早鐘のように打つ心臓の音を聞きながら、 なんとか手綱を繰って、 敵二体の軌跡が描く面の、法線方向へ逃れた。 と、一体が攻撃を放ってきた。 真っ直ぐこちらへ向かってくる、燃え…

『朱い桜』

ある村に、こんな歌が伝わっていました。 もの悲し 御座の桜の 青なる に 満つる朱こそ 荒ぶるる 他にも、この桜には、悲しい事件が起こると 青い花が咲くという伝説があったのですが、 実際にそれを見たものはいませんでした。 さて、ある男がこの木を調べ…

『祟り桜』

とある村でのことです。 始めに犠牲になったのは、家畜でした。 山羊や鶏が、何者かに食い殺される事件が多発したのです。 村人たちは、それらを狼の仕業と考えました。 それで警戒を強めていたところ、 今度は、ある一家が襲われたのです。 惨劇は家の中で…

『人喰い桜』

今はもうない、ある村の外れに、 一本の桜の木が立っていました。 そこへあるとき、 学者を名乗る男が現れて、 その木を調査し始めたのです。 村の者はあまりいい顔をしませんでしたが、 男がどうしてもというので 好きにさせておきました。 男は村人に話を…

『子守り桜』

まだ肌寒い春の夜のことです。 打ちひしがれた様子の女がひとり、 生まれて間もない赤子を抱えて 桜の木の下でしばらく泣いておりました。 そして朝になったときには、 すっかり冷たくなっていたのですが、 幸いなことに、赤ん坊は無事でした。 母親の腕の中…

『桜祭り』

あるところに、桜の木がありました。 毎年、綺麗なピンクの花が咲く頃に、 その桜の木の下で、 小さなお祭りが行われていました。 あるとき、この桜の木の下で死んだ男がおりました。 男は死んだ後も霊となって現れ、 木のそばで悲しげにたたずんでいるので…

『青い桜』

とある村に、桜の木がありました。 あるときその村に、 とても悲しいことが起こりました。 すると次の年、桜は青い花を咲かせたのです。 それが何だか悲しげな青だったので、 きっと村に蔓延する悲しみを感じとって、 桜は青く染まったのだと噂されました。 …