『四騎士物語』

1-001-015.はじまりの歌

生きることに価値があるのなら生かすことはもっと価値がある あなたの生を願うから 石よりも硬い決意で使命を果たそう 心安らかな日々が訪れるように 私たちの悪夢が始まらないように 眠り子を起こしてはならない夢を見ているのだから穏やかな久遠の夢を も…

1-001-014.朧月夜の、初陣 12

ゴゥッ…! その時、火球が二人の間を引き裂くように飛び去って行った。 振り向くと、さっきの敵が再び迫っていた。マドカは、殺意をぶつけられたように感じて、さっと血の気が引いた。 (油断、してた───もし今のが当たっていたら…) やっぱり、訓練とは違う…

1-001-013.朧月夜の、初陣 11

マドカは、その様子を見ていた。 クルス達が吹き飛ばした荷車と、積荷である砲弾の爆発。 砲弾のいくつかは、爆発せずにバウンドし、”巨人”の足元まで転がっていった。 (あ…!、あれを、爆発させれば…!) クルス隊長に伝えようと思ったが、離れ過ぎている…

1-001-012.朧月夜の、初陣 10

セオドナ基地が陥落した… 敵の地上部隊からの攻撃を受けたのか。あるいは、ドラゴンかもしれない。あるいは、先の砲撃で大損害を受けたのか。 味方の第一部隊は、どうしたのだろう。騎兵は、歩兵は。 (いやいや待てよ…) 原因はともかく、ちょっと早過ぎな…

1-001-011.朧月夜の、初陣 9

───ドラゴンは、乗り手を選ぶことがある。 そのようなドラゴンは、 選んだ乗り手の意図を察知することに長けている、と言われる。そして、乗り手の側も、ドラゴンの感じていることが分かるという。 両者の間には、なにか不思議なつながりがあるらしい。 マド…

1-001-010.朧月夜の、初陣 8

朧月が、ぼんやりとした光を放ちながら浮かんでいる。大きく広がる薄い雲を背景に、 切れ切れの雲が、空を横切っていく。 ”巨人”は未だシルエットしか見えず、近づくにつれ、その巨大さだけが明らかになってくる。 高さは、木組みの見張り台と同じか、もっと…

1-001-009.朧月夜の、初陣 7

人影…と見えたが、人型ではない。ただ、何か巨大な、動くもの…である。よく見ると、ぼんやり光っているように見える。 驚くのはその大きさで、 遠くにポツンと見えるだけだが、それでも周囲の木々の、何倍もの高さがある…! (なんだありゃ…) (あんなもの…

1-001-008.朧月夜の、初陣 6

暗闇に、少し目が慣れてきた。 下から見上げると、ちょうど真上に大きな雲が頭上を覆うように広がって来ていて、 格闘するドラゴン達のシルエットが(割と)よく見える。 小柄な方が、マドカのジェットドラゴンだ。 逆に上からだと、暗い森が背景になって、…

1-001-007.朧月夜の、初陣 5

マドカは、少し先をゆくクルス達が突然消えたのでびっくりして、しばらくその場にとどまっていた。 ドラゴン達が吠えあっている声が響いてくる。 (戦ってるの…?!) だったら、援護に─── ゴオッ…!! 突然、斜め下方から飛んできた火球が近くをかすめ、そ…

1-001-006.朧月夜の、初陣 4

クルスは、炎が飛び交っている空域に近付くにつれ、戸惑ってしまった。 敵味方の区別がつかない。 月明かりと鳴き声で、微かに居場所は知れるものの、ドラゴンや、その乗り手が身につけているはずの紋章やチーフなどは、 全く見えない。 それどころか、ちょ…

1-001-005.朧月夜の、初陣 3

オルクに乗って上空へ舞い上がると、気分も一気に高揚した。 かがり火のある地上と違って、夜の空の闇はまとわりつくように深く、 月明かりが、自分の手元をぼんやりと照らすばかり。 夜中にこうして飛ぶのは久し振りだったが、 恐ろしさよりも神秘さを、マ…

1-001-004.朧月夜の、初陣 2

ドッ…!!ゴオォォン!!!!!! 静まり返ったセオドナ基地に響き渡る、 突然の炸裂音!! その爆音と振動は基地の隅々にまで伝わって、 見張りの兵や、夜更かししていた者たちを飛び上がらせた。 腰を抜かした者以外は爆音の方向に炎が上がっているのを見…

1-001-003.朧月夜の、初陣 1

東雲の前、夜がもっとも深く沈むころ。おぼろ月が、ぼんやりと───地上の暗い森を照らしている。 見渡す限りの、広大な森。 ときおり吹く風が、森の木々を、草葉を、ざわざわと揺らしている。 不気味に響く声は、夜鳴き鳥。 草ずれの音は、徘徊する獣。 そん…

1-001.002.~生命の歌

ご覧なさい 必死で生きようとしているあの子を そこには人生の葛藤も、憂鬱もない ただ願いただ進む 純粋に 懸命に ああして、生命は自ら輝くの その煌めきが 世界を癒し そして、 育むのでしょう 生きること それは、生命あるものの使命

1-001-001.夜明けの逃飛行

前後斜めの左右から、二体のドラゴンが挟み撃ちを仕掛けてきた。 マドカは、早鐘のように打つ心臓の音を聞きながら、 なんとか手綱を繰って、 敵二体の軌跡が描く面の、法線方向へ逃れた。 と、一体が攻撃を放ってきた。 真っ直ぐこちらへ向かってくる、燃え…